IOTでなにがかわるか?(2)

前回にも記載しましたが、IOTのオープン化が問題になる。

日本にもクローズ環境では、すでにユビキタス技術は実用化している。

電子タグやバーコードで製造工程の管理を行うということはすでに盛んにおこなわれている。

しかし、それらを閉じないでオープン化することは、ほとんど行われていない。

技術的には、電子タグのUcodeで個体識別はでき、残る大きな問題は、このオープン化をどう進めるのかということなのだ。

そのために制度面の課題が問題になる。

たとえば、公道にチップをつける時には勝手につけるわけにはいかないのは当然としても、それを使うーーデータを読み取る、Ucodeだけを知ることなどにも許可がいるのかなどを決めなけらばならない。法律の改定も必要だろう。データ利用で問題がでたとき、だれが責任をとるのか、といったことも考えなければならない。それに関連して制度の見直しや、プライバシーとパブリック、特にガバナンスの問題が重要になる。

ガバナンスは企業統治などと訳されるが、統治というより責任の所在、だれに判断させるかを決めるといった権限など複雑な要因が絡み合った、日本語には適切な訳語のない概念だ。

そして、オープンシステムにおいて、実は技術以上に重要なのがこのガバナンスの問題なのである。

こういった複雑な制度を考えるのが得意なのがヨーロッパだ。EUは多くの国の集まりであるために、組織が複雑になっていったときに、誰の権限でどうやって物をきめるのか、ネゴシエーションをどう行うかなど、日本人がやってないことを辛抱強くやっている。IOTでEUが先行しているのはその点だろう、といっている。

スマートグリットは、2016年4月より、電力自由化で話題になったが、従来より電力メーカーがネットワークにつなぎ、電力の精緻な予測をし最新の管理を行っていた。

そのおかげで、世界でもまれな短い停電時間を達成していた。

しかし、これはまさに日本的な閉じたIOTの成功例のようだ。

これに対し、スマートグリット構想のデマンドサイド・マネジメントでは、電力メーターが家庭内のネットワーク経由で家庭の電化製品の電力利用データをとったり、さらにはそれらを制御することまで考えられている。

ビッグデータをもとに、より正確な電力予測もできるし、万が一災害等で電力供給がひっ迫しても、電灯はつけておくが消費量の大きいヒーターは切るといったことも可能。電力供給と電力需要をほとんどずれなく調整できる。

アメリカで何かをやると多くの場合、最初は失敗する。失敗するが、その失敗体験を分析して、次の新しいステージに上がる挑戦を何度も繰り返し、最後は成功をつかむというのがアメリカの王道パターンのようです。むしろ失敗を背景にチェンジを正当化し、失敗から体制を変えるしかない、失敗したから人員をチェンジする、などーー既存のクロースドシステムの既得権益を切り捨てるために、意図的にそうしているのではないかと思うほどだ、ということです。

失敗が根本的な改革を押し切る原動力に変わり、既得権益が残っていてはできないようなオープン化を実現する。

そして実現したオープンの優位さを背景に、アメリカ発グローバルスタンダードとして世界を席巻するわけのようです。

それに対して、日本の場合は、最初から失敗をしない。慎重で細かく気を使って作りこむからだ。しかし、人間の社会はどんどん変わる。実は同時にガバナンスやギャランティの与え方とか、それを主導する主体はだれかなどの制度面も変わっていく。ところが、成功してしまった組織はそれについていけない。テクノロジーの変化にはついていけるかもしれないが、最適化して既得権益の塊になった社会的なクローズドシステムが残り、変化に対応する。

そういうやり方が、NTTのimodoのような成功を生んだ。非常に高度な端末が100億円単位ともいわれた開発補助金により安く提供され、キャリア間の加入者競争がサービス戦争に繋がり、端末メーカーとキャリアの両方が成長する原動力になった。

しかし、そういうクローズドモデルで成功したからこそ、スマートフォンが出てきたときに、オープン路線に切り替えられなかった。

世界はオープンにより加速するイノベーション競争に入っている。イノベーションというのは進化論の世界。こうすれば必ず成功するなどというものはイノベーションではない。つまりイノベーションを達成するには、単にやってみる回数を増やす以外に王道はない。

いろいろアイデアが出ていろいろなチャレンジをする中から、たとえば1000回のチャレンジで成功するのは3回ぐらい。だれか偉い人が方向性を決めて、ターゲットに向かって皆が資源を集中して効率よく進める。--日本の産業政策の基本のターゲティング政策は、そういうイノベーションに対して全く無力だ。100人いるなら100人に自由にやらせて、その中で一番いいものが勝っていく。そういう進化論的な状況をつくらない限りイノベーションは出てこない。

では、チャレンジを増やすにはどうするかといえば、これはもうチャレンジできる環境を整備することに尽きる。

オープンがイノベーションに重要なのは、まさに確実にチャレンジを増やすインフラになるからだ。逆にチャレンジできる環境がないのならば、独創性がいくらあってもうまくいかない。

今そういう時代にきている。というとです。

ネットの技術は必然的にグローバルに変化しているから、世界のライバルと環境は同じだ。しかし、情報通信分野で「電子立国日本」と誇っていたのが今はうそのよう。--どんどん弱くなっているのは、やはり、オープンということに対して日本の志向が合わないからではないかと思う。そういうオープンな考え方を、哲学や根本的レベルから理解しないと、小手先ではいけないところまできているのでないだろうか。

IOTでも、大きな考え方の変化を強いられているようです。

国が永遠に成長していくには、価値観が、時代時代で、大きく変化するといわれている。

その成長の行き詰まりが現在なら、そこで、考え方、価値観の変化が起こるはずである。

それが今起こりつつあるのかもしれない。

 

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