境界性パーソナリティ障害(BPD)について
アメリカ精神医学会の診断基準が、日本でも広く使われています。次の九つの項目のうち五つ以上当てはまれば境界性パーソナリティ障害(BPD)と診断されます。
1、人に見捨てられないように、なりふりかまわない行動をする
2、対人関係が不安定で激しい
3、不安定な自己像や自己認識が持続する
4、自分を傷つける可能性がある衝動的な行為が二つ以上の領域にわたる。浪費や性行為、アルコールや薬物の乱用、過食など
5、自殺のそぶりや自傷行為を繰り返す
6、強いイライラや不機嫌など、気分や感情が短時間で変動する
7、慢性的な虚無感がある
8、不適切で激しい怒りを抑えられない
9、ストレスによって妄想的な思い込みや自分の行動に記憶がないなどの解離性症状が一時的に起こる
このような症状からもわかるように、境界性パーソナリティ障害は普通の人にある特徴の著しく極端なものです。普通の人と連続性があるため、診断に迷うグレーゾーンが多く、通常の社会生活を送ることができる人も多くいます。
原因は最近の研究で、脳の働きに関わる遺伝的要因が約6割を占めることがわかってきました。衝動性を抑制するセロトニン系の機能的低下や前頭前皮質の活動低下などのさまざまな要因が関係しているようです。
これとは反対に、ある研究では、異なる環境で育った7組の一卵性双生児と同じ環境で育った18組の二卵性双生児について、境界性パーソナリティ障害の発症をの有無を調べたところ、後者には境界性パーソナリティ障害が両方の子供に見られるというケースが2組あったが、前者のケースでは、両方に境界性パーソナリティ障害が認められたケースは1例もなかったという。境界性パーソナリティ障害には、遺伝より環境の方が重要であることを示した研究もある。ですが、これまでも、失調型(スキゾタイパル)パーソナリティ障害などでは、遺伝的な関与が比較的大きいと言われてきたが、最近では、境界性、自己愛性、演技性、強迫性パーソナリティ障害などでも、遺伝的な影響が比較的大きいとする報告もある。