階層の流動性はあるかについて
階層の流動性はあるか
トクヴィルの指摘は現代の産業社会でも認められるのであろうか。1970年代と80年代に関する米国のデータでは、稼得所得のトップ20%に属した者が、10年後に同じトップ20%の残っている割合は半分以下だとされていた。下位20%にいた低所得者の人々の半分以上が10年後にはこの低所得グループから抜け出ていたとされる。高所得者も低所得者も流動性がかなり高かったことがわかる。トクヴィルは「貧困層は定着し固定化する」と論じたが、現代の米国では高所得者・低所得者双方ともかなり流動的だということになる。
しかし近年、とくに90年代以降、この流動性に陰りが出てきたという指摘がある。貧困層の所得は上昇しているが富裕層の所得がそれ以上に上昇しているのも大きな原因の1つのようだ。(経済学に何ができるか 猪木武徳著)
日本はどうなっているのでしょうか。
佐藤嘉倫「現代日本の階層構造の流動性と格差」 ( https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr/59/4/59_4_632/_pdf )をみてみますと、特定の階層は、保護的な制度に守られており、別の階層は、流動性に巻き込まれている。といっています。
父の主職種から、子供の、高等教育をみると、専門職、ホワイトカラーといわれる父の職業を持つものの子供が高く、農業、ブルーカラーといわれる職業を父に持つものの子供の進学状況は低いという、明らかに違いがあるといっている。そのことが、将来の就職にも影響し、高等な学校を出た方が、学校経由の就職ができ固定化していき、そうでない場合は、流動化していくと言っています。
良い就職ができると、正規職員として、長く勤めている傾向があり、最初に非正規職員として就職すると、その後もその非正規職周辺にとどまる傾向があると言っています。
また、大企業と、中小企業の格差が拡大しているともいっている。
賃金低下率も、1991年から2005年には、高校以下の学歴者が賃金低下率が大きくなった。といっています。
上層ホワイトカラーの世代間移動は、より固定化している。また全体的にも安定的であるといっています。賃金も、上層と下層で、安定的に固定化しているが、上層の方がより固定化しているという。
日本は、高所得者は、より固定化していき、それに比べて、低所得者は流動的ということのようです。