戦略と人事制度について

三年後あなたは何をしていますか?―戦略的発想の欠如。2010年3月、たまたま、「EUに対して日本がいかにして働きかけるべきか」という講演を孫崎さんは聴いた。講師はステインハウス、英国国立行政研修学院欧州部長である。彼が講義の途中に面白いことをいった。「私は‘日本がいかにしてEUに働きかけるべきか’を日本の官庁、企業に助言してきました。私はしばしば相手に‘ところで2年後、3年後、あなたはどんな仕事をどういう風にしていますか’と聞きました。すると、相手は一瞬呆然とするのです。2年後、3年後の自分の未来に明確な計画がないのです。」当然の反応である。日本の官庁、企業の人に「あなたは2年、3年後何をどうしていますか」と問うても正確な答えは出てこない。ポストは会社や企業が決める。2、3年で移動する。仕事も同じ。何をするかを自分で決定するわけではない。これでは、「2年、3年後何をどうしていますか」とあらためて問われても、呆然とするのは当然だ。ステインハウスは続けて言った。「この点が日本人と英国人の違いです。英国人は2年後、3年後の自分の目標を持っている。そして、その目標をどう達成するかを常に考えている。」(日本人のための戦略的思考入門 孫崎享著より)

戦略は特定の目的達成のために、総合的な調整を通じて力と資源を効果的に運用する技術・理論である。(ウィキペディア)

技術・理論とは、どういうことだろうか、無駄なことと思えることを、極力おさえていき、やりたいことに集中するという選択と集中のようなことを意味するということだろうか。また、石原慎太郎さんは、この閉塞状態を打開するには、どうしたらいいか、という問いに我慢をすることだといっていました。また、ベンジャミン・フランクリンは、倹約と勤勉があればこわくないとも言いました。

しかし、私は、日本人も、意識の高い人が結構いるように感じています。超一流企業に勤めながら、休む間もなく、仕事、趣味、自己啓発などに取り組んでいる人がいます。

仕事では、配属などの問題が残るのは確かです。じゃあ、会社の人事システムがいけないということだろうか。

一般には人事部が決めた配属を 事業部が受け入れるという企業も多いようです。こうい った中央集権的な人事が現場の変化に対応できない 理由となっているという専門家もいます。変化 はビジネスの現場で起こっているのですから、ビジネ スの現場である事業部が採用や昇進・報酬など人事 マネジメントにもっと力を発揮すべきでしょう、ともいっています。

実際にイギリスと日本の上級管理者で人事ローテ ーションの幅を比較した調査では、イギリスの上級管 理者のほうが幅広いローテーションを経験していまし た。欧米では一部の選抜された社員がジ ェネラリストとして育成され、それ以外の社員は特定 分野のスペシャリストとなります。このあたりのことも、上記の、2,3年後何をしているのか、ということに関連しているといえるでしょう。

採用状況が、欧米と、日本がちがっているということです。欧米の企業は、日本では進まなかった雇用の流動 化を実現しています。流動化の実現方法は、大別す るとアメリカやイギリスなどのアングロサクソン型と、ド イツや北欧などジャーマン・ノルディックタイプを代表 とする大陸ヨーロッパ型の2種類があるそうです。

日本では、整理解雇については、「人員整理の必 要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定の 合理性」「手続きの妥当性」という4つの要件を満た さなければ認められないことが、1970年代に最高裁 判所の判例で示され、解雇権濫用法理が定着してき ました。2000年以降は、2003年の労働基準法改正、 2008年の労働契約法施行などを通じて、法律的に解 雇権濫用法理が明文化されて、法律面での解雇規制 が強められています。もっとも、下級審では、整理解 雇の4要件すべてを満たす必要はなく、4つのうちいく つかを満たせばよいという整理解雇の4要素という動 きもでており、複雑な状況になっています、ということのようです。

また、欧米では、職業に関する技術認定がおこなわれており、職業に関する技術認定は労働者各人の知識・スキ ルの見える化につながりますので、認定制度が普及 するほど雇用流動化は促進されます。これに対して、 日本は職業に関する技術認定が普及しておらず、こ の面でも雇用流動化を阻んでいます。

人事制度自体にも、新卒一括採 用からはじまって、職能資格制度、年次管理、遅い 選抜、春闘、定期昇給など日本で独自に発達し、日 本以外には存在しない制度がたくさんあります。そして、 これら日本独自の人事制度が日本企業の変化を阻害 してきたていわれているようです。人事制度面でも日本は普通 の国になっていかなくてはなりません。 日本にいたらごく普通の人事にかかわる事柄は、 実は日本だけで存在するもので、変化の激しいグロー バル競争に打ち勝っていくためには、私たち日本人の 人事に対する常識を変える必要があるでしょう、といっています。(これからの日本がめざすべきは 大陸ヨーロッパ型人事マネジメント 須田敏子より http://www.aoyamabs.jp/facultyandresearch/files/jma.pdf )

これらより、日本人が戦略的に見えないのは、日本の人事制度のためかもしれません、欧米の場合、上級管理者か、スペシャリストかを、早い段階で選別されており、将来を考えることが簡単ということかもしれません。

上記の須田先生は、日本の失われた20年、30年はこの日本の人事制度が原因かもしれないともいっています。

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