欧米主要国における賃金の伸び悩み
欧米主要国における賃金の伸び悩み(世界経済の潮流2017より)
賃金伸び悩みの要因と考えられる事項のうち、(1)労働需給の緩み(スラック)の存在、(2)労働生産性の上昇率の鈍化、(3)労働者の賃金交渉力の低下、(4)予想インフレ率の低下、(5)労働者のモビリティの低下、(6)人工知能(AI)等の技術革新の影響について、アメリカ、ユーロ圏、ドイツ、フランス及び英国の動向を確認されたものが記載されていた。
労働需要の緩みについてであるが、リーマンショックより、アメリカをはじめヨーロッパの国でも、パートが増えているということのようである。
IMF(2017)では、総雇用者数に占める非自発的パートタイム労働者の割合が1%ポイント上昇した場合、名目賃金上昇率は0.3%ポイント低下するとの試算が示されている。
アメリカでは、主に高額所得者が非競争契約を結んでいるという事実も指摘している。非競争契約とは、雇主と労働者との間の雇用契約で、当該労働者が競争相手である他企業に転職することを離職後一定期間禁止するものである。
アメリカ財務省の分析によれば、非競争契約の適用が標準偏差一単位増加した場合、賃金が1.4%低下するとの結果が得られている。
賃金の伸びをみる上では、予想インフレ率の動向を把握することも重要である。労働者は、インフレによる購買力の低下を避けるべく、賃金交渉を行うことから、予想インフレ率の上昇は、賃金の上昇につながる。
IoT、ビッグデータ、AI、ロボットといった技術革新が雇用や賃金に与える影響については、低・中賃金の雇用の喪失、賃金の二極化、ICT専門家など一部職種での賃金上昇、団体交渉を通じた賃金交渉力の低下等様々な点が指摘されており、現段階では、賃金上昇率への影響について一概に結論づけることができない。としているが、労働者は、業種の変更等を迫られることは避けて通れないとも考えられる。
しかし、伸び悩んではいるかもしれないが、少しづつ伸びている。