「コロナウイルス感染者が(イブプロフェンやコルチゾンなどの)抗炎症薬を服用することは、感染を悪化させる要因になる可能性がある」フランス厚生大臣の投稿について

「コロナウイルス感染者が(イブプロフェンやコルチゾンなどの)抗炎症薬を服用することは、感染を悪化させる要因になる可能性がある」

「イブプロフェンを服用してはいけない根拠としては、コロナウイルス患者が発熱の為にイブプロフェンを服用したところ、危篤状態になったという。」

といった内容を、フランスの厚生大臣オリヴィエ・ヴェラン氏が3月14日、ツイッターで発表したようです。

そのことを受けて、Pub Med で調べてみました。

Ibuprofen virus 、で検索して調べました。その中からいくつかを中野がピックアップしました。

ウイルス感染におけるイブプロフェンの使用は、その後の膿胸と関連している

Paul Little, MBBS, MD

University of Southampton Southampton, United Kingdom

https : //doi.org/10.1016/j.jpeds.2016.10.058

概要の中で、NSAIDは急性呼吸器感染症ではまったく使用すべきではないか、アセトアミノフェン単独では症状を制御できない夜の睡眠をとるためなど、特に困難な時期には症状制御に非常に控えめに使用すべきであることが示唆されています。といっています。

急性ウイルス感染に対する抗生物質を使用しない非ステロイド系抗炎症薬は、小児の膿胸リスクを増加させる:一致した症例対照研究

Muriel Le Bourgeois, MD1,∗,

Correspondence information about the author MD Muriel Le Bourgeoi

, Agnès Ferroni, MD2, Marianne Leruez-Ville, MD2, Emmanuelle Varon, MD3,4, Caroline Thumerelle, MD5, François Brémont, MD, PhD6, Michael J. Fayon, MD, PhD7, Christophe Delacourt, MD, PhD1,8, Caroline Ligier, MPh9,10,11, Laurence Watier, PhD9,10,11, Didier Guillemot, MD, PhD9,10,11,12 on behalf of the Children, Antibiotics, Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs and Childhood Empyema (ChANCE) Study Group

https : //doi.org/10.1016/j.jpeds.2016.05.025

結論として 、急性ウイルス感染中のNSAIDの使用は、小児の膿胸のリスク増加と関連しており、抗生物質はリスクの減少と関連しています。このリスクと抗生物質-NSAIDの相互作用の存在が示唆されています。これらの発見は、NSAIDが小児の急性ウイルス感染中の第一選択の解熱治療として推奨されるべきではないことを示唆している。といっています。

以上の2つは、「イブプロフェンを服用してはいけない根拠としては、コロナウイルス患者が発熱の為にイブプロフェンを服用したところ、危篤状態になったという。」ことに、さらにイブプロフェン(非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs))を使わないことを推し進める理由に加えることができると考えられます。

しかし、逆とは言い切れませんが、逆のことをいっていそうな研究もあります。それが以下です。

再発性単純ヘルペス感染症におけるシクロオキシゲナーゼ阻害剤の予防的使用

M. WACHSMAN  L. AURELIAN  J.W. BURNETT

この研究では、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(イブプロフェンまたはインドメタシン)による継続的な経口療法により、単純ヘルペスウイルス感染患者16人中9人の再発性発疹の発生率と頻度が減少しました。

アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンがライノウイルス感染ボランティアの免疫機能、ウイルス排出、および臨床状態に及ぼす悪影響

Neil M. H. Graham, Christopher J. Burrell, Robert M. Douglas, Pamela Debelle, Lorraine Davies

60人の健康なボランティアに2型ライノウイルスを鼻腔内で投与し、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、またはプラセボの4つの治療群のいずれかに無作為に割り付けました。

アスピリンとアセトアミノフェンの使用は、血清中和抗体反応の抑制と関連し(P <.05対プラセボ)、鼻の症状と徴候の増加(P<.05 vs.プラセボ)。ということで、特にイブプロフェンの記載はなく、特にそれぞれに影響を与えていないととることができる。

イブプロフェンが、コロナウイルス感染を急激に悪化させるということは、今までの他のウイルスでの研究から可能性があるとも考えれます。コロナウイルスでの研究はないので、今の時点でははっきりとは分からないというところでしょう。

しかし、ウイルス感染での、イブプロフェンそして、同じ作用を示すと考えると非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は控えるのが良いのではないかと考えられる。疑わしいのは使用しない方がいいと考えられます。そして、発熱のファーストチョイスは、フランスでも言われているアセトアミノフェンになるということだろう。この薬は、妊娠していても使用されることがありますし、他のNSAIDsでアレルギーが出た場合にも代わりの薬として使用されたりします。(市販薬の使用説明書には、薬アレルギーには使用しないこととなっている)しかし、アセトアミノフェンも長期大量では肝障害が起こる可能性あるといわれます。

NSAIDsとアセトアミノフェン

NSAIDsとはNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略であり、非ステロイド性抗炎症薬と訳されます。NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン類の合成を抑制します。プロスタグランジンの中でも、特にプロスタグランジンE2(PGE2)は起炎物質・発痛増強物質です。NSAIDsは主にPGE2の合成抑制によって鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、詳細な機序は未だに解明されていません。(日本ペインクリニック学会 https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html  )

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