熱中症
熱中症
熱中症には、いくつかの種類があります。
- 熱けいれん
- 熱疲労
- 熱射病(最も重篤)
これらの種類は、症状や、体温が上昇するかどうか(上昇する場合はどの程度上昇するか)、体内の水分や塩分がどの程度奪われるかという点で違いがあります。大量発汗が起きると、体から水分と塩分が奪われ、血圧の低下や痛みを伴う筋収縮が起こります。体温が非常に高い状態が長時間持続すると、内臓が損傷を受けることがあります。
1、熱けいれん
熱けいれんは、重度の筋肉のけいれんで、非常に暑い中での長時間の運動、大量発汗、過剰な水分補給が重なった場合に起こります。
熱けいれんは手、ふくらはぎ、足、ふともも、腕などの筋肉に生じる強い収縮です。筋肉は、収縮すると硬くなって緊張し、痛みが生じます。痛みの程度は、軽度の痛みから激しい痛みまで、様々です。発熱は通常起こりません。
軽症の熱けいれんは、涼しい環境で休むことや、塩分を含んだ飲みものや食べものを摂取することで治ります。通常は、スポーツドリンクや、小さじ2杯程度の塩を溶かした水を1~2リットル程度飲むだけで治まります。重症の場合は、静脈から水分と塩分を補給して治療します。多くの場合、収縮した筋肉のストレッチを行うと、痛みはすぐに和らぎます。
2、熱疲労
熱疲労は、暑さによって体の塩分(電解質)と水分が過剰に失われた状態で、これにより血液量が減少するため、ときには失神を含む様々な症状が生じます(ショック)。
熱疲労は熱けいれんより重症です。より大量の水分や塩分が失われ、症状も重くなります。熱疲労は、過度の暑さにさらされ続けた場合には、熱射病へと進行することがあります。
症状
症状は漠然としていて、他の多くの病気の症状と似ています。症状が暑さに関係していることに気づかない人もいます。症状には以下のものがあります。
- めまい
- ふらつき
- 筋力低下
- 疲労
- 頭痛
- かすみ目
- 筋肉痛
- 吐き気
- 嘔吐
強い痛みを伴う筋肉のけいれんが起こることはまれです。立ち上がるときに失神しそうになり、意識を失うこともあります。普通は大量発汗がみられ、心拍数や呼吸数は上昇し、血圧が下がります。
熱射病とは異なり、熱疲労では錯乱や協調運動障害は起こりません。また、体温は普通は平熱ですが、発熱がみられても一般に40℃を超えることはありません。
治療
- 涼しい環境での休息
- 水分と塩分の補給
治療には、休息(活動をやめること)、暑い環境から離れさせること、口から(スポーツドリンクや、小さじ2杯程度の塩を溶かした1~2リットル程度の水を飲むことによって)あるいは静脈から、水分と塩分を補給することが含まれます。衣類を緩めるか脱がせて、皮膚を濡らしたり、濡れた布を皮膚にあてたりして、体を冷やします。
水分を補給すると、多くはすぐに完治します。
3、熱射病
熱射病は、体温が異常に上がり、多くの器官系に機能障害が起こる、生命を脅かす状態です。
- 何時間も運動した若い運動選手や、暑い季節に冷房のない屋内で何日も過ごした高齢者などに起こることがあります。
- 体温は40℃を超え、脳の機能障害が起こります。
- 直ちに体を冷やす必要があります。
熱射病は、高温によって引き起こされる病気の中で最も重い病態です。他の熱中症よりもはるかに重症です。他の熱中症との主な違いは以下の通りです。
- 体温が通常40℃を超える。
- 脳機能障害の症状が現れる
症状
めまい、ふらつき、脱力感、動きのぎこちなさと協調運動の障害、疲労、頭痛、かすみ目、筋肉痛、吐き気と嘔吐など、熱疲労と同様の症状があれば注意を要し、熱射病にかかっている人は体温の著しい上昇を感じないようです。
熱射病では皮膚は熱く赤くなり、乾燥することもあります。暑くても汗が出ないこともあります。
脳の機能障害が起こるため、錯乱や見当識障害のほか、けいれん発作が生じたり、昏睡状態に陥ったりすることもあります。心拍数や呼吸数は上昇し、脈拍は速くなります。血圧の上昇や低下もみられます。
体温は40℃を超え、普通の体温計では測れないほどの高熱になることもあります。
治療
- 冷水に浸すことによる冷却(水の入った浴槽などに体を浸す)
- 蒸発冷却(体に水の霧を吹きかけ、扇風機をあてる)
- ときに冷却輸液
直ちに、救急車を呼ぶべきとなっています。
迅速に治療しなければ、約80%の人が死亡するとなっています。生存者の約20%で、脳の損傷が完全に回復せずに、人格変化、運動障害、協調運動の障害が残ることがあります。人によっては腎臓が完全に回復しないことがあり、回復後も、体温の異常変動が何週間も持続することがあるようです。
暑い場所での活動
非常に暑い場所での激しい活動は避けるべきです。高温環境での活動が避けられない場合は、水分を十分に摂取して、頻繁に皮膚に霧を吹いたり冷たい水で濡らしたりして皮膚を冷やすことが、正常に近い体温を保つのに役立ちます。必要な水分を補給するためには、のどの渇きがおさまってからも、さらに水分を摂取することが必要です。
運動や作業の後に体重が減少しているかどうかは、脱水状態の目安になります。体重が2~3%減少した人には、水分を多めに摂取するよう指示するべきです。また、元の体重と、翌日の運動や作業前の体重との差は、約1キログラム以内でなければなりません。体重が4%以上減った場合は、活動を1日制限する必要があります。
体重50kgの人ならば、1kg~1.5kgの体重減少が、脱水状態の目安です。
体重が、2kg以上減った場合は、1日休みが必要ということです。
暑い場所で作業を行う場合、仕事の程度や量を徐々に増やしていくと、やがて順化が起こり、その結果、順化が起こる前には危険であった温度の場所でも、安全に作業できるようになるようです。一般に、暑い日中は、1日15分の中等度の活動(汗をかく程度)から始め、10~14日間かけて、激しい活動を90分間行う程度にまで徐々に増やしていくとよいでしょう、ということです。
(以上メルクマニュアル家庭版より)
熱中症を疑う人がいた時の対処法は、
対処法は、まず声をかけて、意識がはっきりしているかを確認し、意識障害がなければ救急車を呼ばなくてもいいということです。意識がはっきりしている場合は、涼しい場所に移動する。そして、体を冷やし、水分(塩分を含むものも含む)を補給する。その時も、自分で水分を補給できるかを確認する、ペットボトルが自分であけられるかなど、自分で水分補給をできなければこれは医療機関にいく。
少なくとも20分ぐらい見守り、状態が良くなっていたら、家に帰ってもよい。良くなってなかったらこれも医療機関に行く。(熱中症 〜応急処置と予防法〜https://www.youtube.com/watch?v=imPjQaxpX3Y&t=231s )
また、熱中症予防の水分補給として、日本スポーツ協会では、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。糖を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが挙げられます。主要な糖であるブドウ糖は、腸管内でナトリウムが同時にあると速やかに吸収されます。そしてそれらに引っ張られ水分も吸収されるというのがそのメカニズムのようです。