αーリノレン酸について
αーリノレン酸
必須脂肪酸であり、生体の発育に不可欠であり、食事などから摂取する必要がある不飽和脂肪酸です。また、摂取された必須脂肪酸は、エネルギー源として利用される割合が大きいことも知られている。
必須脂肪酸にはリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸があります。リノール酸から、アラキドン酸は、5%ほどは作られます。nー6系といわれる不飽和脂肪酸が、リノール酸、アラキドン酸で、nー3系の不飽和脂肪酸が、αーリノレン酸です。これらの脂肪酸は生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症するといわれている。したがって、さきほども述べましたが、経口摂取する必要がある。
脂肪酸の構造、特徴ですが、
天然の脂肪酸は、一般には、直鎖炭化水素で、カルボン酸を持ち、炭素数が偶数です。
アルキル鎖に二重結合を含まないものを、飽和脂肪酸、二重結合を含むものを不飽和脂肪酸という。
一般に、飽和脂肪酸は、融点が高く、常温で個体であり、不飽和脂肪酸は、融点が低く、常温で液体である。
不飽和脂肪酸は、二重結合を含むが、ほとんどがシス型であり、二重結合が多い不飽和脂肪酸は、2つの二重結合の間に酸化されやすいメチレン基を挟む。
※シス、トランス表示とは、2つの同一置換基が、二重結合を挟んで同じ側にあるものをシス体、反対側にあるものをトランス体という。安定性は、シス<トランス。
末端メチル基(ω)側から数えて二重結合の始まる位置が3番目、6番目、9番目の炭素である場合、それを、nー3系(ω3系)、nー6系(ω6系)、nー9系(ω9系)として分類される。
αーリノレン酸は(C18:3)と表記され、炭素が18個あり、二重結合が3つあることを示しています。
α-リノレン酸からEPA(C20:5)やDHA(C22:6)に変換される割合は10~15%程度であるようである。EPA、DHAもnー3系です。(ウィキペディアホームページ)
EPAやDHAは、魚油に多いのは有名です。αーリノレン酸は、種油に含まれているものがあり、エゴマ、ダイズ、アマに含まれている。その他の食用油には含まれていないか、わずかしか含まれていない。エゴマ油、アマニ油に多く含まれているようである。
( 日清 オイリオ https://www.nisshin-oillio.com/oil/qa/qa02.html )
αーリノレン酸含有量は、エゴマ油で、58000mg/100g、アマ二油で、57000mg/100gのようです。(アマ二フォーラム https://amani.karadanocare-forum.net/amani/amani_nutrition/lino/lino_foodstuff/ )
そんな、αーリノレン酸ですが、厚労省は、魚によっては水銀、ダイオキシンなどの環境汚染物質が含まれていることや世界的な魚資源の不足により、将来、α‒リノレン酸の摂取が重要になる可能性がある。ともいっている。
国民健康・栄養調査の中央値が、目安量、目標量
厚労省は、各脂質の推定平均必要量、推奨量、耐容上限量を算定できるだけの科学的根拠がないので、目安量と目標量を設定している。
そして、n‒6系脂肪酸の目安量、n‒3系脂肪 酸の目安量、目標量、αーリノレン酸の目安量、目標量は、総エネルギー摂取量の影響を受けない絶対量(g/日)で示されています。
年齢によって、摂取量は違うが、n-3系脂肪酸、αーリノレン酸摂取量は、男性15歳~17歳が最も多く、nー3系(ω3系)脂肪酸は、2.5g/日で、α―リノレン酸は、1.7g/日である。(主な脂質摂取量の 50 パーセンタイル値(性及び年齢階級別):平成 17 年及び 18 年国民健康・栄養調査)
次に厚労省の資料によれば、n‒3系脂肪酸に関する研究は除く脂質については、メタ・アナリシス(n‒3系脂肪酸に関する研究は除く)では脂質摂取量と総死亡率との関連は 認められず、アメリカ人女性の大規模コホート研究でも脂質摂取量と冠動脈疾患の罹患率との関連も認められていない。nー3系は除くというところがポイントです。
エネルギー制限をおこなった低脂質食とエネルギ制限をおこなわない高脂質食との2年間の介入研究がおこななわれ、高脂質食の方が体重が減少効果は大きかったようである。これは肥満者の病態によって大きく変わるようです。インシュリンの分泌量や、インスリン抵抗性によって効果が変わるようです。
そして、高脂質食/低炭水化物食は低脂質食/高炭水化物食に比べて、 HDL‒コレステロールが増加し、中性脂肪値は減少するが(よい作用)、LDL‒コレステロールは増 加する(悪い作用)。さらに、高脂質食/低炭水化物食は穀類に含まれるミネラルが不足し、たんぱ く質摂取量が多くなるため、腎臓への負担が増加し、糖尿病性腎症の悪化が懸念される。このよ うに、高脂質食/低炭水化物食の長期間摂取時の安全性は確立していないので、慎重な適応が望ま れる。といっています。
n‒3系脂肪酸は、血中中性脂肪値の低下、不整脈の発生防止、血管内皮 細胞の機能改善、血栓生成防止作用等いろいろな生理作用を介して生活習慣病の予防効果を示す。
そして、nー6系との関連では、女性を対象とした Nursesʼ Health Studyでは、α‒リノレン酸の冠動脈疾患予防作用はリノール酸の摂取量によって影響されていない。
平成 17 年及び 18 年国 民健康・栄養調査のデータ・ベースから計算された n‒3系脂肪酸摂取量の 50 パーセンタイル値 を1歳以上 17 歳までの目安量とした。ということで、さきほどの上でも書いた、男性15歳~17歳では、2.5g/日です。これは、各年齢層では、最も摂取量が多い量です。
α‒リノレン酸の目標量
α‒リノレン酸の摂取(1. 8 g/日)により総死亡率が低下することが、フランス及びインドの冠 動脈疾患罹患者を対象とした介入研究で報告されている。また、健常人においても、2004 年 に発表された Iowa Womenʼs Health Studyではα‒リノレン酸摂取量と総死亡とのあいだに弱い負の関連が認められている。
そして、アメリカでも、αーリノレン酸の摂取が、心疾患減少効果の報告もあり、
日本人でも、α‒リノレン酸による冠動脈疾患の予防効果は期待できるとしております。このため、18 歳以上で は、平成 17 年及び 18 年国民健康・栄養調査のデータ・ベースから計算されたα‒リノレン酸摂 取量の 50 パーセンタイル値以上の摂取が望まれる。
年齢によって、摂取量は違うが、男性18歳~29歳で、約1.5g/日である。そして、目標量(上限)は算定しなかったが、男性においては前立腺がんの罹患リスクのため、α‒リノレン酸の過剰摂取は注意が必要である。(「日本人の食事摂取基準」(2010年版)各論 脂質より https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html )