一般の方が使う市販薬下痢止め薬(ロペラミド)について
下痢とは、水分含量が多い液状の糞便を頻回に排出する状態。下痢は便の液状化と定義されるが、臨床的には排便回数の増加、排便量の増加を伴うことが多く、腹痛・発熱などの症状を伴うことも多い。
急性下痢と、慢性下痢に分類されます。
急性下痢は、3つに分類されます。
侵襲性下痢(侵襲細菌による大腸粘膜異常によるもの、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、コレラ)
分泌性下痢(病原体の毒素によって主として小腸での分泌異常をきたすもの。細菌感染やウイルス毒素による水の吸収不足又は分泌促進、コレラ毒素、サルモネラ菌、病原性大腸菌など)に分けられる。
その他、薬の副作用などがある。
急性下痢症の 90%以上は感染症が原因であるといわれています。
慢性下痢(持続期間が4週間を超える)は4つに分類されます。
炎症性下痢(腸の炎症性疾患を原因とするもの。潰瘍性大腸炎、クローン病、C.difficile感染、アメーバ赤痢、寄生虫感染、放射線性腸炎など)
脂肪性下痢(慢性膵炎や吸収不良症候群などで小腸での脂肪の吸収が障害されて生じる)
機能性下痢(腸管運動の異常によるもの、過敏性腸症候群)
薬剤性下痢(薬剤、マグネシウム、ソルビトール、PPI、胆汁酸製剤、抗菌薬、NSAIDs、コルヒチンなど)
4週間以上持続する下痢は、急性下痢が長引いた場合もあれば、慢性下痢を引き起こす病気の早期段階である場合もありますので、この場合は病院でみてもらいましょう。
治療は、可能であれば、下痢の原因に対して治療が行われます。例えば、食事や薬が原因の場合はそれを避け、腫瘍は切除し、寄生虫感染症の場合はそれを根絶する薬が投与されます。しかし、多くの場合は、自然に治るようです。
続いて、市販薬を使うかどうかの判断と注意ですが、
警戒すべき徴候
・血便や膿の混じった便
・発熱
・脱水の徴候(排尿減少、嗜眠、ぼんやりする、極端なのどの渇き、口腔乾燥)
・慢性下痢(持続期間が4週間を超える)
・夜間の下痢
・体重減少
これらがあれば、すぐに病院を受診しましょう。
これらを除外するので、市販薬の下痢止めを使用する場合は限られてきます。
市販薬使用を考慮するのは、急性下痢の場合で、上記の警戒すべき事項に該当しない場合です。
そして、急性下痢は、90%以上が感染性のものです。
基本的には、急性下痢の場合は、下痢止め薬はつかわない、と病院のマニュアルでも記載があるほどである。
しかし、どうしても便の回数を減らしたい理由がある場合は、市販薬の下痢止め薬をしようすることになります。
便の急速な通過は、下痢で特に多くみられる一般的原因の1つです。便に正常な硬さが備わるには、ある程度の時間、便が大腸にとどまっている必要があります。便が大腸を速く通過しすぎると水様便となります。一般市販薬下痢止めに含まれるロペラミドはそれらを抑制すると考えられます。腸のコリン作動性神経シナプス前膜のμ受容体を刺激して、アセチルコリン遊離を抑制して、腸運動を抑制するものです。また、消化管からの水分吸収を促進します。
腸の筋肉を弛緩させ、便が腸を通過するのを遅くするロペラミドは、下痢の頻度を減らすのに役立ちます。
ただし、胃腸炎の原因が特定の細菌(特にサルモネラ菌、赤痢菌、C. difficile)である場合には、下痢止め薬によって状態が悪化する可能性があります。
ロペラミド病院医薬品添付文書にも、原則禁忌として、感染性下痢患者とあり、理由は、治療期間の延長をきたすおそれがある、となっています。
注意が必要です。
(薬剤師国家試験対策参考書2020年度版 病態・薬物治療、薬理、メルクマニュアル家庭版 より)