野生の動物に肥満がない理由について
からだのしくみに合った食事の摂り方をしていれば、空腹感に振り回されることもなく、太る心配もないというこを予防学者故小山内博先生はいっています。
アフリカの狩猟採集民や野生の狩猟者である動物たちに肥満が見られないのも、彼らの生活とからだの営みとの間に矛盾がないようです。
彼らは空腹を覚えると、狩に出かけます。
空腹を覚えたときは血糖値が低下した時で、この時からだにはエネルギーが十分に蓄えられており、それが動員されて活動のエネルギーとなるので、空腹時こそ活動のチャンスなのです。
一流のスポーツ選手も同様です。昭和30年代に活躍したプロレスラーの力道山は、試合の前は丸1日何も食べなかったといわれています。
スケートの清水宏保選手も、競技の前には一切ものを食べず、お腹に何もない状態にして試合に臨むとのことです。極限までからだを使う選手は、闘うために体をベストの状態に保つすべを知り尽くしているというこです。
空腹状態で狩をしていると、血液中のブドウ糖は減っていますから、脂肪が動員されてブドウ糖に変えて補われます。走り回ってやっと獲物にありついて食べ始めると、血液中にすでにブドウ糖が補われているので、食べ過ぎることなくちょうどいいところで満腹感が訪れます。
自然の制御装置が働くのです。
野生の狼も同様です。狼は満腹のときは寝ています。狼の好物であるカモシカの群が近くを通り過ぎても、見向きもしません。
空腹になった時点でカモシカを狩に出かけます。
カモシカの方も心得ていて、狼が空腹になる頃には狼から遠くはなれた安全な場所に避難しています。
それを追いかけるのですから、狼もたいへん苦労します。
獲物が獲られる頃には、体の中にしまってあったエネルギーが血液の中にどんどん戻ってきて、ピークに達していますから、食べ始めても、途中まで食べるとちょうどよくなってしまうため、食べ過ぎになることはありません。
食べ過ぎに自然にブレーキがかかるようにできているのです。
大半の自然の生き物は、このように食べ過ぎにブレーキがかかるようにできているため、得られたものを全部食べるということはめったにないようです。